福岡地方裁判所飯塚支部 昭和34年(む)526号 判決 1959年10月20日
被疑者 松尾成実 外二名
決 定
(被疑者氏名略)
右の者等に対する傷害並に暴力行為等処罰に関する法律違反各被疑事件について、昭和三十四年十月十七日福岡地方裁判所飯塚支部裁判官岡崎永年がなした勾留の裁判に対し、右被疑者等の弁護人諫山博、谷川宮太郎、横山茂樹、立木豊地より適法なる準抗告の申立があつたので、当裁判所は次のとおり決定する。
主文
本件準抗告の申立はいずれもこれを棄却する。
理由
第一、本件準抗告の理由
弁護人諫山博外三名の準抗告申立書記載のとおりであるからこれを引用する。
第二、当裁判所の判断
一、被疑者等に対する傷害並に暴力行為等処罰に関する法律違反各被疑事件について、福岡地方検察庁飯塚支部検察官が昭和三十四年十月十七日福岡地方裁判所飯塚支部裁判官に対し勾留を請求し、同裁判所裁判官岡崎永年が勾留の裁判をなしたことは、当該各勾留状その他の関係書類によつて明らかである。
二、よつて案ずるに、本件各勾留状記載の被疑事実がそれ自体犯罪を構成するものであることはいうまでもないところ、一件資料中各被害者並に現場目撃者の供述調書その他の関係資料によれば、被疑者等が右犯罪を犯したと疑うに足る相当な理由があることが認められる。
三、次に、被疑者等に対する本件各勾留の裁判が、被疑者等が罪証を隠滅すると疑うに足る相当な理由があると認めてなされたものであることは、本件各勾留状の記載により明らかであるところ、弁護人は、被疑者等に罪証隠滅の虞れはないと主張するのでこの点を検討する。一件資料によれば、被疑者等はいずれも日鉄二瀬労働組合潤野支部所属の組合員であるところ、本件各被疑事件はいずれも会社側のなした人員整理に伴なう組合側の強行就労の過程において発生した事件であつて、関係者も多数に及び、しかも興奮した雰囲気の中で行われたものであることが窺われ、従つて事案の真相を明かにすることが相当困難であることは十分予想されるところである。
而して上記の如き事情並に被疑者等の同僚である同組合員その他の供述等主として人的証拠に依存せざるを得ないこの種事案の性質を考慮すれば、本件事案は被疑者等に罪証を隠滅すると疑うに足る相当な理由がある場合に該当するものと認めるのが相当である。
しからば原裁判官が、被疑者等に対し罪証を隠滅すると疑うに足る相当な理由があるとしてなした本件各勾留はいずれも相当であつて、本件準抗告はいずれも理由がないから刑事訴訟法第四百三十二条、第四百二十六条第一項によりこれを棄却することとし主文のとおり決定する。
(裁判官 桜木繁次 川淵幸雄 吉田修)
(準抗告申立理由略)